Playing the keyboard at midnight, creating music all by myself. That was my everyday life until I went to university. However, when I joined the band club and started band activities, the darkness that had been engulfing my heart slowly began to clear... A soul-stirring coming-of-age musical romance novel based on the author's own experiences. And will the bird finally soar into the vast sky?
Genre: FICTION / Literary*
大きな時の流れがまるでみえるような時もあれば、今、目の前で起きていることさえ、いったいどんな意味があるのかわからなくなってしまう。穏やかに時は流れている。今の自分を忘れて、時のはじまりと終わりのことを考える。水のように高いところから低いところへ流れていくあらゆるものごと。未来は望むようにはやってこないけれど、感じとろうとすれば、不意にすべてが明らかになったような開かれた場所にたどり着く。最初の清らかな水のたまりと、やがてすべてが流れこむ海の広さは 誰の心の中にもある。あらゆる魂は、その中で時に逆らい時にその速度をあげる。雲は海から生まれ、また雨となって大地に降り注ぐ。今ここからだと時の流れは河のように穏やかに思えるけれど、もっと永い時間のなかでは、河の水は天へのぼって雲になる。魂も同じだろうか? 心を通わせた人々が、時々、心の中にいることを感じるけれど、彼や彼女は別の時間、別の場所では生きていてそれぞれの思いの中にいる。僕は自分が自分のなかにしかいないと思っていた。けれどそれは大きな間違いだった。彼女はただの友だちで、出会った頃にはとても惹かれていた。けれどその気持ちを伝えることができなかった。僕は別の女の子と初めてのデートをした。季節は夏の前で、ちょうど梅雨があけて空が高くなりはじめた頃だった。好きなのは彼女の友だちではなかったのに。僕の困惑を知らず、彼女はとても素敵な笑顔で言った。
「とてもいい娘だから」
*
夜の遊園地でベンチに座り、隣にいる女の子がとても魅力的だということを感じていた。足はほっそりとしていて長く、肩に手をまわせば、その身体の線の細さが感じられた。はじめてのキスをして、そして戸惑った。好きな女の子の友だちとキスをして、そのままどうにかなってしまうこともできるのだ。けれど、僕が目の前の女の子に対してではなく、彼女に対して感じてきた気持ちは、どうすればいいのだろう? 彼女の友だちはキスをした後で、僕が何か話し出すことを待っていた。けれど、自分が何か間違ったことをしてしまったのかもしれないということと、彼女の友だちを傷つけることがまた彼女を傷つけるだろうということを恐れた。
遊園地までの道のりはとても長く険しかった。遊園地は僕たちが住んでいる町から、電車でも1時間以上は時間がかかる。僕と彼女の友だちは駅で待ち合わせて、バイクに乗り、国道をまっすぐ走った。アスファルトは太陽に焼かれて、渋滞の車はボンネットで卵が焼けそうだった。僕らはその渋滞の脇をバイクで走り続けた。バイクの後ろに女の子をのせるのは初めてで、胸のふくらみが運転をしながらとても気になった。出会ったばかりなのに身体を密着している。10代が終わったばかりの僕には、出会ったばかりの女の子に楽しい話ができるようなゆとりはなかった。話したことは大学の退屈な授業のこととか、バンドのこと。今年の夏には海に行きたいと思っていること。そういうことをバイクで走りながら話した。バイクにふたりで乗っていると、顔と顔が近く、ミラーには女の子の顔がくっきりと映っていた。僕はちらちらその表情を盗み見た。風に髪がなびいていた。あまりの距離の近さに、身体と身体から、何か自分の中をかけめぐる思いのようなものが伝わってしまって、どうしようもなくなるのではないかと思った。その最初から僕は彼女への思いと、彼女の友だちとのあまりに近い身体の距離に翻弄されていた。20歳の青年にとって、自分の中にある欲望をコントロールすることは簡単なことではない。ほんの少し、よこしまな思いに身をまかせてしまえば彼女の友だちとどうにかなることだってできてしまうのだ。
Language | Status |
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English
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Translation in progress.
Translated by Meng Huiliang
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